日語閱讀:夏祭りの夜は何か起こりやすい(二)
浩一の返答に、浩一の身體になった裕子の表情が凍り付く。
「えそんななんで、浩一があたしの格好になってるのよ!!」
自分の姿をした裕子の返答は,浩一の想像を裏付けるに充分な意味を持っていた。
浩一は,自分の導き出した答えを受け入れるしかなかった。
自分と裕子の身體が入れ替わってしまったことを。
「えー、それじゃ、あたしと浩一の身體が入れ替わったっていうの?!」
浩一の説明に,裕子は、信じられないと言った口調と言葉で応える。
「だって、お前裕子には、オレが、裕子自分の姿に見えるだろ?」
「うん。」
「オレには、お前、裕子が、オレ、浩一の姿に見えるんだ。こうなれば、もはや、いえることは,1つだけだろ。」
「そ、それじゃ、ホントに」
そう呟きながら、裕子は、自分の身體と浩一の身體を、交互に見つめ直す。
その表情が、いきなりひきつったモノに変わった。
「ちょ、ちょっと、待って。それじゃ、本當に、浩一が、あたしの身體の中にいるの?」
浩一の身體の裕子は,暗闇でも、そうと分かるほど、顔を真っ赤にした。
だが、その先の言葉は、裕子だけではなく,裕子の身體の浩一の顔も真っ赤にさせるに充分な威力を秘めていた。
「えーん、そんな!あたし、ブラつけてないのよ!!」
とんでもない事態に、想わず口走ってしまったのだろうが、裕子のその言葉に、浩一も驚かずにはいられない。
「ブ、ブラ、付けてない?!」
浩一と裕子、同時に顔が赤くなる。
「お、おい、なんで、そんなカッコで?!」
「だって、おばあちゃんが、著物の下は、下著は,なにもつけちゃいけないってニプレスは付けてるけど」
どうやら、浴衣の著付けは、全て祖母がやってくれたらしい
和服にうるさくて。という言葉が脳裏に蘇る。
「そ、そそ,それじゃ、もしかして、下も」
下著は、付けてはいけないとなれば、當然ブラだけではなく、その下も
自分の身體が女のコで、しかも現在の服裝が、かなり、ソソるものだと知ってしまうと、つい、浩一の視線も下へ向く。
ましては,浴衣という格好は、スカート以上に、ちょっとめくれば、すぐ素肌、しかも、左右にまで捲れるという特典付きなのだ。
「だめだめ!だめーぇ!!」
裕子は、慌てて、自分の身體の浩一にしがみついた。
そのあまりの力の強さに、浩一は息が詰まる。
「ちょちょっと離してくれい、息が」
自分の身體の,あまりにも苦しそうな素振りに,裕子は慌てて、腕の力を緩める。
「ご、ごめん。」
「お、おちつけよ。今のお前の身體は、オレの男の身體なんだから。」
息を落ち著かせようと、反射的に胸に手をやりかけた浩一は、そこにあるモノに気づいて、慌ててあてかけた手を、離す。
「けど、なんで、こんなことが、起こったの?階段から落ちたわけでもないし、雷が落ちたわけでもないし,変な薬を飲んだ覚えもないのに。」
「確かになあ」
裕子の言葉に、浩一も、ため息をつくしかない。
神社の境內で、2人は,しばし考え込んだ。
「もしかして」
「え、なにか、心當たりがあるの?」
浩一の呟きに、裕子は,身を乗り出さんばかりの勢いで、浩一に詰め寄りる。
「大分,前に聞いたことなんだけど,この神社、元は縁結びの神様らしいんだ。」
「縁結びまさか、神社のせいだっていうの?」
「さあ、確証はないよ。でも、こんなこと、神様が関わってるんでもなきゃ,まず起こらないよ。」
「でも、縁結びって、あたし達、もう縁が結ばれていると想うんだけど。」
「だから、既にある縁が離れないよう、訳の分からない結び方でもしたんじゃないか。こうすれば、もう絶対に離れないってくらいにさ。」
「確かに、相手とは確かに離れたくても離れられない狀態だけど」
にしても、とんでもない結び方をしてくれたものだ。
蝶々結びとはいわないが、もう少し、実用的な結び方があるだろうに。
この神社の神様が何を考えていたかは、まさに神のみぞ知るというところだ。
「あーあ、けど、とんでもないことになっちまったな」
そう呟きながら、浩一は,境內への階段に腰を降ろし直した。
前髪が、多少、後ろに流されてとめられているせいか、どうも、顔が引っ張られているような感覚がある。
「うんって,ちょっと、そんなに腳、広げないでよ!!」
「あ、わりぃ。」
膝をくっつけて座る習慣などないだけに、浴衣という服裝のため、今の浩一の姿は、かなり、アラレもない格好になっていた。
慌てて、膝を揃え直す。
「けど、オレ達、もう、元に戻れないのかなあ」
「え、そんな」
不安すぎる浩一の言葉に,裕子の表情が絶望に染まる。
「だって、これが、神様の力じゃないとしても,原因が分からないんじゃ、元に戻れるとは想えないよ。」
「そ、それじゃ、あたし達、このまま?」
「そうとしか、いいようがないよ。ったく、何の因果で」
「そんなこといって、浩一、実は、喜んでるんじゃない?」
「え、そそ、そんなことないって。」
裕子のツッコミに,それを否定しようとする浩一だったが、口調で、慌てぶりがバレバレ(死語)だった。
まあ、健全な高校男子となれば、女性の身體に興味をもって、當然。
興味ゼロという奴とは、あまりお近づきにはなりたくない。
事実、浩一も、折角,女のコの身體になれたんだから、あれもこれも、と,いかがわしいことを考えてもいた。
裕子の問いつめられると、流石に、罪悪感が浮上してきて、歯切れも悪くなる。
「ま、いいか。あたしも、浩一の身體で遊ばせて貰えればいいんだし。」
裕子のカウンターに、浩一の顔も強ばる。
流石に,自分の身體をいいように扱われるとなれば、気が気ではいられない。
もしかしたら、裕子の方が、入れ替わっているという今の狀態を楽しんでいるのかも知れない。
意を決して、浩一は口を開いた。
「正直にいうよ。オレ、裕子の身體になったってんで,結構、Hなこと,考えてた。」
裕子の表情が,ほら言ったとおりと言わんばかりになる。
「でも、考えたのはそれだけじゃない。
いくらなんでも、このままじゃ、困る裕子のままじゃ、女のコの身體じゃ、抱きしめられるだけで、抱きしめることが出來ないよ。なにか、あっても、守って貰えても、守ってやることが出來ないよ。」
続けられた言葉に,裕子の表情が、はっとしたものに変わる。
幼なじみという関係から、なし崩し的に戀人同然の関係になって,もうすぐ半年。
浩一が、そこまで、自分のことを考えていくれていたとは想ってもいなかった。
自分のことを想っていてくれたとは考えても見なかった。
「それに、お前の顔、もう鏡でしか見れなくなるのは、寂しすぎるよ。」
浩一は、裕子の顔で、にっこりと微笑んで見せた。
それにつられるように,裕子の浩一の顔もほころぶ。
「浩一。」
想わず、裕子は、浩一を抱きしめていた。
傍目からみれば、浩一が裕子を抱きしめているとしか見えないが。
そのまま、力一杯抱きしめようとした裕子だが,今は自分の身體が男であることを思いだし、すんでの所で、力を緩める。
「ねえこのまま、元に戻れなくても,あたし達、今みたいな関係でいられるかなあ」
裕子の問いかけに、浩一も,流石にすぐには返答できない。
人間,外見じゃないとはいうものの、人を好きになるということは,その人の內面も外見も全て引っくるめて好きになると言うことなのだ。
それを別にしても、自分の格好をした相手を好きでいられるかどうか。
「うーん、自信は、ないけど、大丈夫じゃないかな。オレが、裕子を必要としてることには変わりはないわけだし例え、外見がオレであっても、裕子には、オレのそばにいて欲しい」
「でも、そしたら、アレとか、どうしよう。」
不安そうな友好の問いに、流石に、浩一の背筋に冷たい物が走る
自分のOOを自分の身體で捨てさせることにも嫌悪感があったが、自分の**を自分に奪われると言うことには、嫌悪を通り越して恐怖が浮かび上がる。
無意識のうちに,浩一は、腕を組みながら身震いしていた。
「ま。まあ。その時になれば、何とかなるんじゃないか。」
そう応えたものの、その時の光景が頭に浮かび、身震いが止まらない。
「ふーん、」
その時、突然、閃光が夜空を覆った。
あの時の花火に劣らぬ,烈しい光が、夜空を白く染める。
全く予想していないことだっただけに、想わず、2人とも目が眩む。
光の烈しさの余り,一瞬,意識を失いかける
數秒後、どうにか自分を取り戻したとき,そこには、自分ではなく,少し前まで入れ替わっていた対象が立ちすくんでいる姿があった。
「あ」
「元に戻れた?」
しばし、見つめ合う2人
「裕子だよな。」
「浩一だよね。」
2人は,ほぼ同時に頷いていた。
「それじゃ、ホントに元に戻れたの?」
「ああ、どうやらな。」
「よかったぁ!!」
慣れ親しんだ自分の身體と言うこともあって、裕子は、浴衣姿ということも忘れて,神社の周りを,ぴょんぴょんとはね回る。
「けど、なんでっていったら悪いけど、どうして元に戻れたんだろ?」
「うーん、縁結びの神様が、こんな余計なことしなくたっていいと、想ったんじゃないかな。」
「ふーん、神様にしては、ちょっといい加減じゃない?」
「おい、そんなこというと、またなんか非道い目に會わされるぞ。」
「え?!あ、神様、今の冗談,今のなしです。」
浩一の言葉に,裕子は、慌てて柏手を打ち,神社を拝む。
そんな裕子の姿を見ながら、浩一は、ふと想った。
元々、自分と裕子の関係は、淺いモノとは言えなかったが,縁結びの神様だけに、このハプニングによって、それをより深いモノにしてくれたのではないかと。
案外、他のカップルにも、表沙汰にならないだけで、似たり寄ったりのことが起こっているのかも知れない。
「裕子、帰ろうぜ。神様が、また気紛れで何かする前にさ。」
一足先に,石段を降り始めた浩一を、裕子は慌てて、追いかける。
裕子が追いついたことを確認すると、浩一は,登ってきた時同様,彼女に歩調を會わせる。
耳に心地よい、竹林のざわめきを聞きながら、2人は,ゆっくりと石段を降りていった。
[1][2]
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