《十二國記》月之影·影之海(上)第一章(1)
故事介紹:中嶼陽子是一名普通的高中少女,除了學習成績優秀,似乎沒有什么太多的特點。雖然在學校里談笑風聲過著似乎一成不變的生活,但陽子的心中卻始終存在著一個一直揮之不去的陰影:她每天晚上都會做一個令人十分不安的夢,在那里有一個她所不知道的世界,以及各種令她驚恐萬分的景象。而她只有拼命驚醒才能逃離這個可怕的夢境。
這樣的恐懼每天都在發生,讓陽子陷入了巨大的痛苦中,然而某天,在陽子的面前忽然出現了一名高大的金發青年凱奇,不由分說地將陽子強行帶往了異世界。在凱奇的挾制下,驚詫不已的陽子根本無法作出任何反應或掙扎。她隱約覺得凱奇的出現和自己經常做的夢有著莫大的關系,這種異樣的好奇心甚至超過了她的恐懼。
很快陽子被無盡的黑暗所包圍,這黑色的天幕似乎連光線都無法射入,充滿了異樣的透明及稠密感,她也漸漸失去了知覺。當陽子醒來時,出現在眼前的是從未見過的浩瀚大海,廣闊而神秘。陽子忽然明白,自己已經已經來到了另外一個時空的世界,而此時獨自一人的自己,則不得不在這陌生的世界中生存下去。把自己帶來此處的凱奇不知在何時已經離開,她在這個世界中唯一的線索,就只有他的名字。
無家可歸的陽子漫無目的地在異世界里游蕩,然而這個世界實在是太陌生,完全是一個和她以往的世界觀和人生觀完全不同的空間,迷茫的陽子幾乎失去了回家的信心和勇氣。就在她萬念俱灰時,在她面前忽然出現了一個百姓穿著和建筑風格極其類似古代日本的小村莊,一下子令她慌亂的心平靜下來。
似乎事情并不像她所想象的那么簡單,在詢問村民有關這個世界的事情時,陽子心中浮現出一絲不安和恐懼。在陌生的異世界里,一切都充滿著謎和未知的事物,陽子不得不獨自面對殘酷的命運……
月の影 影の海(上) 十二國記
月之影·影之海第一章
一章
1
|漆黒《しっこく》の|闇《やみ》だった。
一片漆黑。
彼女はその中に立ちすくんでいる。
她驚恐地佇立其中。
どこからか高く澄んだ音色で、|滴《しずく》が水面をたたく音がしていた。ほそい音は闇にこだまして、まるでまっくらな|洞窟《どうくつ》の中にでもいるようだが、そうでないことを彼女は知っていた。闇は深く、広い。その天もなく地もない闇の中に、薄く|紅蓮《ぐれん》のあかりがともった。闇のかなたに炎でも燃えさかっているように、紅蓮の光は形を変え、踴る。
某處傳來高昂而清脆的音色,那是水滴敲打在水面的聲音。黑暗里有著微弱的回聲,讓人以為似乎是身處在完全黑暗的洞窟里,但她知道并非如此。
黑暗好深邃、好……巨大。在這天與地都不存在的黑暗中,出現一抹淡淡的鮮紅色光暈,鮮紅的光在變形、舞動,仿佛黑暗的彼方有火焰在燃燒。
赤い光を背にして無數の影が見えた。|異形《いぎょう》の獣の群れだった。
逆著紅光,可以看見數不清的影子,是一群異形怪獸。
こちらはほんとうに|踴《おど》りながら、あかりのほうから駆けてくる。|猿《さる》がいて|鼠《ねずみ》がいて鳥がいる。さまざまな種類の獣の姿をしていたが、どの獣もどこかがすこしずつ図鑑で見る姿とはちがっていた。しかもそのどれもが、実際の何倍も大きい。赤い獣と黒い獣と青い獣と。
它們從亮光之處邊跳邊朝這邊跑來。雖然看起來是各式各樣的動物,有猴子有老鼠有鳥,但每一種都和她在圖鑒上看過的模樣有些差異,而且這些赤獸、黑獸與青獸,每一只都比實際上的動物大了好幾倍。
|前肢《まえあし》をふりあげ、小走りに駆ける。あるいは跳躍し、宙を旋回し、まるで陽気な祭の行列でも近づいてくるようだった。陽気といえば陽気には違いなく、祭といえば祭にはちがいない。
它們高高揮舞著前腳,小跑步過來,一邊還跳起來在半空中轉圈圈,仿佛是熱熱鬧鬧的迎神廟會隊伍正在接近。不過說它是熱鬧卻又和熱鬧不太一樣,說它是迎神隊伍卻又和迎神隊伍大不相同。
異形の者たちは犠牲者をめがけて走っているのだ。|生《い》け|贄《にえ》を血祭りにあげる歓喜に、小躍りしながら駆けてくる。
這些異形是朝著犧牲者的方向往前沖,它們是為了即將在血祭中獻上貢品而歡喜,所以才蹦蹦跳跳地跑過來。
その証拠に殺意が風のように吹き付けてきていた。異形の群の先頭まで、もう四百メートルもない。どの獣も大きく口を開けて、聲はいっさい聞こえなかったが、歓聲を上げているのだと表情でわかる。聲もなく足音もなく、ただ洞窟で水がしたたるような音だけがつづく。
證據,就是殺意正隨風吹襲而來。這群異形中跑在最前頭的已經離她不到四百公尺了,每只野獸都咧開大嘴,雖然聽不到任何聲音,但可以看出它們歡呼的表情。沒有叫喊聲也沒有腳步聲,只有類似水滴滴落在洞窟里的聲音持續回蕩。
彼女は駆けてくる影をただ目を見開いて見つめていた。
她所能做的只是睜大眼睛,注視著逼近的影子。
──あれが、來たら殺される。
──等它們來了,我就會被殺。
そう理解できても、身動きできない。おそらくは|八《や》つ|裂《ざき》にされ、|喰《く》われるのだろうと思ったが、まったく體が動かなかった。たとえ體が動いたにしても、逃げる場所もなく戦う方法もない。
心里雖然明白,卻動彈不得。明明知道自己可能會被四分五裂、會被吃掉,身體仍然動也不能動。然而就算身體可以動,也無處可逃、無法對抗。
體の中で血液が逆流する気がする。その音が耳に聞こえるような気がする。それはひどく|潮騒《しおさい》に似ていた。
她覺得體內的血液在逆流,甚至覺得可以聽到逆流的聲音,那就像是洶涌的波濤聲。
見つめるあいだに、距離は三百メートルに縮まった。
眼看著距離已經縮小到三百公尺了……
|陽子《ようこ》は飛び起きた。
陽子驚醒了過來。
こめかみを汗がつたう感觸がして、目に強い酸味を感じる。あわてて何度もまばたきをして、そうしてやっと深い息をついた。
她感覺到汗水沿著太陽穴流下,眼睛酸得要命,于是趕忙拼命地眨眼,接著才終于深深地喘了口氣。
「夢……」
“是夢……”
聲に出したのは確認しておきたかったからだった。ちゃんと確認をして、自分に言い聞かせていないと不安になる。
她發出聲音想要確認一下。她一定要好好的確認一下,要是聽不見自己的聲音,她會覺得很不安。
「あれは、夢なんだ」
“只是個夢。”
夢に過ぎない。たとえそれが、このところひと月にわたって続いている夢だろうと。
不過是個夢,不過是個最近連續作了一個月的夢罷了。
陽子はゆっくりと首をふる。部屋のなかは厚いカーテンのせいで暗い。枕元の時計を引き寄せてみると、起きる時間にはすこし早かった。體が重い。手を動かすのにも足を動かすのにも|粘《ねば》りついたような抵抗を感じた。
陽子緩緩地甩甩頭。房間里因為厚窗簾的緣故而暗暗的,拿起枕頭旁的時鐘一看,離該起床的時間還很久。身體很沉重,連想要動一動手腳都覺得有困難,好像被黏住了一樣。
あの夢をはじめてみたのはひと月ほど前だった。
第一次作那個夢大約是一個月之前的事。
最初はたんなる闇でしかなかった。高くうつろに水滴の音がして、まっくらな闇のなかに自分がただ一人でたたずんでいる。不安で不安で動きたくても身動きができない。
起初只有一片黑暗。耳邊傳來水滴進空洞中的尖銳聲音,她則孤伶伶地佇立在伸手不見五指的漆黑中,心中充滿不安,身體想動卻動彈不得。
闇の中に|紅蓮《ぐれん》のあかりが見えたのは、同じ夢が三日続いた後だった。夢のなかの陽子は、あかりのほうから|怖《こわ》いものが來ることを知っていた。ただ闇のなかに光がある、それだけの夢に悲鳴をあげて飛び起きて、それを五日も続けたころに影が見えた。
同樣的夢連續作了三天之后,黑暗中開始出現鮮紅的光暈。夢中的陽子知道,有很可怕的東西將從光的那一邊過來。她連續五天因為這個黑暗中出現光的夢而尖叫著從床上跳起來,然后她看到了影子。
最初は赤い光のなかに浮かんだシミのように見えた。何日か同じ夢を見るうちに、それが近づいてくるのだとわかった。それがなにかの群れだとわかるまでに數日がかかり、異形の獣だとわかるまでにさらに數日を要した。
一開始看起來像是漂浮在紅光中的臟東西,等到好幾天都夢到同樣的夢之后,她才發現那東西正在靠近;等她明白那是某種成群的東西時,又花了幾天;然后再經過數日,她才知道那是異形怪獸。
そうして、と陽子はベッドの上のぬいぐるみを引きよせた。
陽子將床上的絨毛娃娃拉到身邊。
──もうあんなに近い。
──已經離我很近了。
ひと月をかけて地平線からの距離を連中は駆けぬける。おそらく明日か、明後日には陽子のそばにたどりつく。
那群東西花了一個月從地平線那端跑過來,恐怕明、后天就會抵達陽子身邊了。
──そうしたら、自分はどうなるのだろう。
──那樣的話,我該怎么辦?
そう考えて陽子は頭をふった。
想到這里,陽子甩甩頭。
──あれは夢だ。
──那是夢。
たとえひと月続いていても、ましてや日ごとにすすむ夢でも、夢は夢でしかないはずだ。
就算連續作了一個月,而且內容每天都有一點進展,夢仍然只是夢。
言い聞かせても不安は胸を去らない。鼓動は速くて、耳の奧で血液が駆け巡る潮騒のような音がしている。荒い呼吸がのどを|灼《や》いた。しばらくのあいだ陽子は、すがるようにしてぬいぐるみを抱きしめていた。
即使試著這樣說服自己,還是無法拂去胸中的不安。心臟快速鼓動,耳朵深處仿佛能聽見血液如潮浪奔騰的聲響,沉重的呼吸灼燒著喉嚨。陽子抱著填充娃娃好一陣子,像是在尋求依靠。
寢不足と疲労で重い體をむりに起こして、制服に著がえて下に下りた。なにをするのもひどくおっくうで、おざなりに顔を洗ってダイニング?キッチンに行く。
她撐著睡眠不足又疲倦的身軀勉強起床,換上制服下樓去,做什么都覺得提不起勁的,隨隨便便地洗個臉就走進了餐廳。
「……おはよ」
“……早安。”
流しにむかって朝食の用意をしている母親に聲をかけた。
她向面對著流理臺正在準備早餐的母親打聲招呼。
「もう起きたの? 最近早いのね」
“起來啦?最近都很早嘛!”
母親は言って陽子をふりかえる。チラリと投げられた視線が陽子に止まって、すぐに|険《けわ》しい色になった。
她的母親邊說邊回頭看陽子,隨意的一瞥停留在陽子身上,立刻變成了很嚴厲的表情。
「陽子、また赤くなったんじゃない?」
“陽子,是不是又變紅了?”
一瞬、なんのことを言われたのかわからずに陽子はきょとんとし、それからあわてて髪を手で|束《たば》ねた。いつもならきっちり編んでからダイニングに顔を出すのだが、|今朝《けさ》は眠る前に編んだ髪をほどいて|櫛《くし》を入れただけだった。
陽子原本沒聽懂這句話是什么意思,呆了一下子,接著才趕忙用手將頭發束起來。以往她都會先把頭發綁好才到餐廳來,今天早上卻將睡前綁好的頭發解開,只插了一個發梳。
「ちょっとだけ染めてみたら?」
“是不是染一下比較好?”
陽子はただ頭をふった。ほどけた髪がふわふわと|頬《ほお》をくすぐった。
陽子只是搖搖頭,披散下來的蓬松發絲輕輕擦過臉頰。
陽子の髪は赤い。もともと色が薄いうえに、日に焼けてもプールに入ってもすぐに色が抜けてしまう。背中まで髪を伸ばしているが、伸ばすと毛先の色がぬける。おかげでほんとうに脫色したような色になってしまっていた。
陽子的頭發是紅色的,原本顏色就很淺了,只要一被太陽曬或泡在游泳池里還會退色。她的頭發現在留到背上,發梢的顏色變得很淡,因此看起來就像真的去染過一樣。
「でなきゃ、もっと短く切る、とか」
“不然的話,要不要再剪短一些?”
陽子は無言でうつむく。うつむいたまま大急ぎで髪を編んだ。きっちり三つ編にすると、すこしだけ色が濃く見える。
陽子不發一語地低著頭,默默地迅速將頭發編起來。編成整齊的麻花辮之后,顏色看起來就比較淺了。
「誰に似たのかしら……」
“你這到底是像誰啊?”
母親は険しい顔でためいきをついた。
母親表情冷冷地嘆了口氣。
「このあいだ、先生にも聞かれたわよ。ほんとうに生まれつきなんですか、って。だから染めてしまいなさい、って言ってるのに」
“上次你們老師也問過我,你這到底是不是天生的?所以我才覺得你干脆把頭發染一下好了。”
「染めるのは禁止されてるから」
“可是我們不準染發。”
「だったらうんと短く切れば? そうしたら、すこしはめだたなくなるわよ」
“那剪短一點好了?這樣起碼不會那么明顯。”
陽子はうつむく。母親はコーヒーを入れながら、冷たい口調でつづけた。
陽子不說話,母親則一邊倒著咖啡,一邊用冷淡的口氣繼續講。
「女の子は|清楚《せいそ》なのがいぢはんいいのよ。目立たず、おとなしくしてるのがいいの。わざわざ目立つよう、はでな格好をしているんじゃないか、なんて疑われるのは恥ずかしいことよ。あなたの人間性まで疑われてる、ってことなんだから」
“女孩子家最重要的還是整潔樸素,不要太顯眼,要老實一點。我知道你不是故意要引人注目,不是要打扮得很招搖,但被人家懷疑總是很丟臉的,因為人家甚至會因此而懷疑你的人格。”
陽子は黙ってテーブルクロスを見つめる。
陽子沉默地盯著桌布。
「その髪を見て不良だと思うひともいると思うの。遊んでる、っておもわれるのもいやでしょ。お金をあげるから、帰りに切ってらっしゃい」
“我猜一定有人看到你的頭發,就以為你是不良少女。你也不希望自己被人家當成太妹吧?我給你錢,放學后就去剪一剪。”
陽子はひそかにためいきをつく。
陽子偷偷地嘆氣。
「陽子、聞いてるの?」
“陽子,聽到沒有?”
「……うん」
“……嗯。”
答えながら窓のそとに目をやった。ゆううつな色の冬空が広がっていた。二月なかば、まだまだ寒さは厳しい。
她一面回答一面將目光投向窗外。顏色憂郁的冬季天空非常遼闊,二月過了一半,天氣依舊嚴寒。
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